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「――あなたで四人目よ!」
 ルイアナは大きく叫んで、カロンを振り返った。
 ルイアナはカロンの手を取り、広い部屋をいくつも抜けて、ある部屋の張り出した露台(テラス)に連れて来た。
「知っていて?それがつまり、どういうことだか分かる?」
「い、いいえ…。ルイアナ様」
 カロンは戸惑いながら言った。
「私の手足を増やしたいのよ」
 整った顔はそのままに、声にはどこか軽妙な面白がるような響きがある。
 どうやら表情にとぼしいのは、ルイアナの癖らしかった。
 優雅だが淡々と話す調子が合わさって、まるで演劇の台詞を読む役者のようだった。
「――もっとも、私の、でなくて、彼らの、ですけどね」
 少しだけ茶目っ気を見せて、ルイアナは瞳を揺らした。
 カロンはわずかながら彼女が喜怒哀楽も表情に上らせるのを確認して、少しだけ安心した。
「……?どういう意味でございますか?」
 カロンが首を傾げると、ルイアナは鈴の音のような笑い声を転がした。
「よくってよ。あなたは気にしなくていいの」
「はあ…」
 ルイアナはしばらくカロンの手を手にとって、その指先をつまんだりして、姿形をまじまじ観察していた。
 高貴な人間らしく、無遠慮で有無を言わせぬやり方で、相手を調べていた。それから言った。
「髪の色まで一緒!揃えてるのね」
 ルイアナは呟いた。
「おじさまらしい慎重さ!惚れ惚れするわ。…それでも、いくら似姿が一緒でも、前来た三人のうち、一人は、私が気に入らなかったものだから、厨房に追いやられてしまったみたいだわ。最近見ていないの」
 カロンは相手の言うことが分からず、じっと様子を見ていた。
「――ねえ、これから私たち仲良くなれるかしら?カロン」
 ルイアナは涼しげな色の瞳をカロンに据え、真摯なまなざしを注いだ。静かだが、瞳の奥から迫ってくる迫力のようなものがあった。
「今とてもどきどきしているの。あなたにもこれが伝わるといいわ。…これからあなた、私にそれはうやうやしく仕えてちょうだいね。私も、あなたの大事な主人であるように振舞うことよ」
 ルイアナはもう一度首を傾げてたずねた。「いいかしら?」
 カロンは黙ってうなずいた。
 これが、二人の出会いだった。



                                   ――序章  了

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